【万博×eスポーツ】障がい・年齢の壁を超えて誰もが主役になれる未来

2025年、世界中の注目が大阪・関西万博に集まります。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げるこの祭典で、注目のイベントが開催されます。一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)が主催する「未来をつなぐeスポーツの力 -JAPAN ESPORTS CONNECT-」です。2025年7月23日から24日にかけて、万博会場内のWASSE南側で開催されるこのイベントは、単なるゲーム大会ではありません。eスポーツが持つ「年齢、性別、障がいの有無などを問わず、誰もが楽しめるユニバーサルなスポーツ」としての特性を前面に押し出し、新たな社会的価値と未来の可能性を示すことを目指しています。

eスポーツの高いインクルーシビティ:障がいや年齢の壁を越えて

eスポーツの最大の魅力の一つは、その驚くべきインクルーシビティ(包摂性)にあります。従来のスポーツと異なり、身体的な能力差が勝敗に直結しにくく、戦略性や反射神経、チームワークといった要素が重要になります。この特性が、障がいを持つ人々や高齢者にとって、参加へのハードルを大きく下げています。

「インクルーシブ」は、「ソーシャル・インクルージョン」(社会的包摂)という言葉から来ており、これは「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策の理念を表します。

障がいを超えて輝くプレイヤーたち

「バリアフリーeスポーツ」は、障がいのある人々がeスポーツに参加し、活躍できる環境を作るムーブメントです。その旗手ともいえるのが株式会社ePARA。「勝ちより価値」「挑戦と寛容」をモットーに、障がい当事者が主体となって未来を切り拓くことを目指しています。視覚情報に頼らず音で戦う格闘ゲーム大会「心眼CUP」の開催や、車椅子ユーザーで構成されるeサッカーチーム「ePARAユナイテッド」の結成とJリーグクラブとの連携など、その活動は多岐にわたります。彼らの目標は、eスポーツを通じた楽しみの提供だけでなく、スキルアップ支援や就労機会の創出にまで及びます。JR東日本グループと連携した「バリアフリーeスポーツスクール」や、障害者雇用を目指す企業と求職者をマッチングする「ePARA就活フェス」など、社会参加・就労支援の取り組みも進んでいます。

世代をつなぐコミュニケーションツールとして

急速な高齢化が進む日本において、eスポーツはシニア世代の健康増進や社会参加の新たなツールとしても期待されています。東京都西東京市では、eスポーツ体験後に高齢者の交流意欲や外出頻度が向上したというデータが報告されました。また、奈良県で行われた実証実験では、65〜75歳のアクティブシニア層向けのビデオゲーム教室によって、特に「軽度認知障害」の疑いがあった6名のうち5名が回復したとの報告もあります。

広がるeスポーツの輪:注目の大会・団体・プレイヤー

多様な人々が集う大会

障がいを持つプレイヤーが主役となる大会も増えています。ePARAが主催する「心眼CUP」や、企業対抗戦も行われた「ePARA CHAMPIONSHIP」などは、その代表例です。シニア世代向けの大会も活発で、富山県などが中心となり開催された60歳以上対象の全国大会「LEGEND CUP」や、神奈川県と実行委員会が共催する「SUNSHINE eスポーツフェスタ」などが開催されています。さらに、大阪・関西万博では、会期中の2025年10月1日にシニアeスポーツ大会「GeeSports大会」の決勝が開催されることも決定しており、万博が多様な世代の交流促進の場となることが期待されます。

シーンを支える団体

日本のeスポーツシーン全体を統括し、普及と発展を推進するのがJeSU(日本eスポーツ連合)です。バリアフリーeスポーツ分野では、前述のePARAが中心的な役割を担っています。他にも、福祉や教育といった領域とeスポーツを結びつけるJESPO(日本eスポーツ機構)や、中高生の健全育成を目指すNASEF JAPAN、若者のeスポーツ活動を支援するGameic(全日本青少年eスポーツ協会)など、様々な団体が活動しています。

輝きを放つプレイヤーたち

インクルーシブなeスポーツシーンからは、多くの魅力的なプレイヤーが登場しています。全盲でありながら音を頼りに戦う「心眼」プレイヤーのFortia所属・なおや選手は、声優としても活動。難病と闘いながら、顎(あご)で操作する特殊なコントローラーを駆使して格闘ゲームに挑むJeni選手。彼らの挑戦は多くの人々に勇気を与えています。また、自閉症スペクトラム障がいを持ちながら「ぷよぷよ」のプロ契約を結んだRiricky選手など、多様な才能が花開いています。

シニア世代では、秋田県で結成された平均年齢67歳(結成時)のチーム「マタギスナイパーズ」が有名です。「孫に一目置かれる存在」をコンセプトにFPSゲーム『VALORANT』などに挑戦し、メディアにも多数取り上げられています。海外に目を向ければ、スウェーデンの「Silver Snipers」のように、70代、80代のメンバーを含むシニアプロチームも活躍しています。

誰もが楽しめる工夫:進化するユニバーサルデザインとテクノロジー

プレイヤーの多様なニーズに応えるため、ゲームを取り巻くテクノロジーも進化しています。特に、身体的な制約があっても快適にプレイできるよう開発された「アダプティブコントローラー」は重要です。ソニーがPlayStation 5向けに発売した「Access コントローラー」は、ボタン配置の自由なカスタマイズや外部スイッチの接続が可能で、多くのプレイヤーから支持されています。軽く押すだけで反応するスイッチコントローラーや、Jeni選手が使う顎操作コントローラーなど、個々の状況に合わせたデバイスも開発されています。左右のユニットを入れ替えたり、分離して二人で使ったりできるユニバーサルデザインのコントローラーも登場しています。

ハードウェアだけでなく、ソフトウェア側の配慮も進んでいます。『ストリートファイター6』に搭載された、ePARAも開発協力したサウンドアクセシビリティ機能は、視覚情報に頼らず音で相手との距離や状況を把握できる画期的なもので、全盲のプレイヤーからも高く評価されています。ボタン配置の変更や難易度調整といったゲーム内設定も、アクセシビリティ向上に貢献しています。

公平な競争の場へ – eスポーツが拓く未来

eスポーツは、年齢、性別、障がいの有無といった壁を乗り越え、すべての人々が同じ土俵で競い合い、協力し、つながり合える、無限の可能性を秘めたフィールドです。アダプティブ技術の進化と、インクルーシブなコミュニティの広がりは、その可能性を現実のものとしつつあります。

大阪・関西万博で開催される「JAPAN ESPORTS CONNECT」は、eスポーツが持つ「つなぐ力」と「未来を創る力」を世界に示す絶好の機会となるでしょう。このイベントをきっかけに、誰もが自分らしく輝ける、真にユニバーサルなeスポーツ、そして社会の実現に向けた歩みが、さらに加速していくことを期待します。

情報出典

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000175.000039144.html