知られざるゲーム開発大国スコットランド 大阪・関西万博でゲーミングショーケース開催

スコットランドと聞いて、雄大な自然やウイスキーを思い浮かべる方は多いでしょう。しかし、その伝統的なイメージの裏で、世界最先端のビデオゲーム開発拠点として急成長している事実は、まだあまり知られていません。この「知られざるゲーム大国」の実力を世界に示すべく、スコットランド政府は大阪・関西万博にて、「スコットランド・ゲーミング・ショーケース」を開催します

スコットランド・ゲーミング・ショーケース:万博で輝く隠れた才能

2025年4月17日、大阪・関西万博の英国パビリオンにて開催される「スコットランド・ゲーミング・ショーケース」は、スコットランドの多面的な魅力を紹介する「Scotland Day」シリーズの第一弾です [1]。スコットランド政府自らが主催し、ゲーム、クリエイティブ・テクノロジー分野に焦点を当てます [1]。

その狙いは、スコットランドが誇る革新的、しかしこれまで十分に知られてこなかったゲーム産業の力を、万博という国際舞台で初めて本格的に発信し、特に日本との戦略的パートナーシップを強化することにあります [1]。これは、スコットランドが持つ世界クラスの製品やサービス、特にゲーム分野における先進技術とソリューションを日本の企業や投資家に提示する絶好の機会となります [1]。

スコットランドとは? 伝統と革新が息づく国

スコットランドは英国を構成する主要な地域の一つで、グレートブリテン島の北部に位置します。北海道に近い面積を持ち、首都はエディンバラ、最大の都市はグラスゴーです。歴史や自然のイメージが強いですが、近年はIT産業や再生可能エネルギー分野でも注目されています。独自の法制度や教育制度を持ち、スコットランド国際開発庁(SDI)などを通じて、国際的な産業振興や技術革新にも積極的に取り組んでおり、今回の万博出展も、その革新的な側面をアピールする活動の一環と考えられます。

世界を驚かす「スコットランド製ゲーム」:隠れたゲーム開発先進国の実力

伝統的なイメージとは裏腹に、スコットランドは世界レベルのビデオゲーム開発拠点として驚異的な成功を収めています。

数字で見る急成長:スコットランドゲーム産業の実態

  • 経済規模: 2019年時点で、ゲーム産業が生み出す粗付加価値(GVA)は3億5200万ポンド(約700億円)に到達。英国全体のクリエイティブ産業の中でも大きな割合を占めます。
  • 雇用: 同年には6,000人以上をフルタイム雇用。
  • 投資: ゲーム開発会社は年間推定1億4100万ポンド(約280億円)を投資しており、これは高品質なゲーム開発を支える原動力となっています。
  • 国内での位置づけ: 英国には多くのゲーム開発拠点がありますが、スコットランドは147社の独立したゲーム開発会社を持ち、確固たる地位を築いています。

『GTA』を生んだ実力:世界を席巻するヒット作

スコットランドのゲーム開発力の高さを最も象徴するのが、エディンバラに本社を置くロックスター・ノース (Rockstar North) です。世界で最も成功したゲームシリーズの一つ『グランド・セフト・オート (GTA)』の開発元であり、『GTA V』は累計1億9500万本以上を販売するメガヒットを記録しています。この事実は、スコットランドがAAAタイトル(大規模予算ゲーム)を開発できる世界最高峰の技術力と創造性を持っていることを証明しています。

成功の秘訣:人材育成とエコシステム

この成功は偶然ではありません。

  • 世界レベルの教育: 特にダンディー市のアバティー・ダンディー大学は、ゲーム開発教育で世界的に有名で、欧州トップクラスの評価を長年獲得しています。ソニーやマイクロソフトとも連携し、即戦力となる人材を輩出し続けています。
  • 手厚い支援体制: スコットランド国際開発庁(SDI)、クリエイティブ・スコットランド、UKゲームズファンドによる支援や、英国政府による税制優遇措置(VGEC)など、官民一体となった強力な支援体制を含むエコシステムが成長を後押ししています。

万博でゲームを展示する意義:技術と文化の発信

万博でゲームを展示することは、単なる製品紹介以上の意味を持ちます。ゲームはAI、CG、VR/ARなど先端技術の結晶であり、国の技術力を示すショーケースとなります。また、急成長する産業として経済的魅力をアピールし、投資やビジネス連携を促進します。さらに、現代文化の主要メディアとして、国のクリエイティビティや現代的な側面を発信する文化外交の役割も担います。未来社会のデザインをテーマとする万博において、デジタルエンターテイメントの中核であるゲーム展示は、そのテーマとも深く関連します。

スコットランドの狙い:万博をテコに日本との未来を繋ぐ

スコットランドが万博でゲーミングショーケースを開催する背景には、明確な戦略があります。

  • 「隠れた強み」の顕在化: 『GTA』を生んだ開発力や優れた人材育成基盤といった、これまで十分に知られてこなかったゲーム産業の実力を世界、特に日本に示す。
  • 日本市場への注力: 世界有数のゲーム大国である日本との戦略的パートナーシップ強化。
  • 経済的利益の追求: 日本からの投資誘致、スコットランド製ゲームの日本市場展開、開発拠点の誘致。
  • 現代的イメージの構築: 「最先端のゲーム開発国」という革新的な側面を強く打ち出し、国のブランドイメージを刷新。

このショーケースは、スコットランドが自国の「隠れた強み」であるゲーム産業を最大限に活用し、日本との経済・技術・文化的な連携を加速させる戦略的な一手と言えます。

結論:万博でベールを脱ぐゲーム大国

スコットランドは、伝統を守りつつも革新を続け、ビデオゲーム産業において世界トップレベルの実力を持つ「知られざるゲーム大国」へと変貌を遂げました。その背景には、優れた人材育成、世界企業からインディーまでの多様なプレイヤー、そして官民一体の強力な支援体制があります。

大阪・関西万博での「スコットランド・ゲーミング・ショーケース」は、この国のゲーム産業の実力と魅力を世界、特に日本に示す絶好の機会です。投資誘致、ビジネス連携、技術交流、そして現代スコットランドの新たなイメージ発信という多層的な目的を持つこのイベントは、両国の未来の関係をゲームというダイナミックな分野で繋ぐ、重要な一歩となるでしょう。これまであまり光が当たらなかったスコットランドのゲーム産業が、万博を機にどのような飛躍を見せるのか、注目が集まります。

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